[初心者向け] 四季報の読み方について解説
皆さんは会社四季報という本をご存知でしょうか。
俗に”四季報”と呼ばれるこの本は、投資家の間では必携書とされ、投資に必要なあらゆる情報が網羅されています。
しかし書き方が独特であり、読み方が分からなければ無用の長物であるため、初心者にはある程度の解説が必要です。
そこで今回は会社四季報がどういった本なのか説明した上で、投資判断に活かせるように読み方を解説します。
会社四季報とは
四季報とは全ての上場企業の情報をまとめた書籍の事です。東洋経済新聞社から四半期ごと(1月、4月、7月、10月)に出版されているため、”四季”報と呼ばれています。
全上場企業を網羅しているため投資家にとっては辞書のようなものであり、投資を検討する際には真っ先に手に取られる本だと言えるでしょう。
内容は企業の特色や従業員数などの基本情報に始まり、業績や財務情報、チャートや資本移動などの株価情報、編集者による企業の現状と今後の見通しに関するコメントが付記されています。
そのため、知らない会社であってもこれ一冊あれば大抵のことは調べがつくため、投資家にとっては必携書とも言える存在です。
四季報の読み方
一度現物を手に取ってみれば分かると思いますが、四季報は全上場企業を網羅しているだけあってかなり分厚く、文字は細かく書かれています。
省スペース化の為、余計な文言は省略して書かれていることもあり、どこをどう読めばいいか知らない人にとっては読みこなすのが難しい書物と言えます。
そこで、四季報を開いたときに読むべき点と、どのように読めばいいのかについて項目ごとに解説します。
基本情報
最初に見るのは会社の【特色】と【連結事業】です。
その会社がどういう会社なのか、どんな事業を営んでいるのかを知るためです。
ここではフジテレビで有名な㈱フジ・メディア・ホールディングスを例にとって説明しましょう。
【特色欄】を見ると、会社の特徴や今の経営状況が分かります。
「視聴率は低迷中」「音楽、通販、不動産など多角経営を推進」とあります。
つまり、最近のテレビ離れからか視聴率が低迷している一方で、音楽・通販・不動産事業に力を入れているという事が分かります。
【連結事業】を見ると事業内容の横に数字が二つ並んでいますが、これは売上構成比率と営業利益率を表しています。
例えばフジテレビの場合、メディア・コンテンツ事業で全売上高の79%を占めており、その営業利益率は6%です。
次に都市開発・観光事業が全売上の20%であり、その営業利益率は11%というわけです。
その他の事業で1%の売上を稼いでおり、営業利益率は4%です。
<22・3>は時点を表しており、この情報が2022年3月時点での情報だということを示しています。
これを見ると、やはりフジテレビはテレビ・広告が主力事業である一方で、都市開発・観光事業も大きな収益になっていることが分かります。
他のテレビ局に比べると、やや不動産業に寄り気味といったところであり、文字通り「音楽、通販、不動産など多角経営を推進」していることが見て取れます。
解説記事
四季報の中で一番お得な情報が【解説記事】です。
四季報は各企業に担当記者を割り当てており、その記者が企業を取材して分かったことを解説記事として表記することになっています。
四季報の記者は企業とも証券会社とも利害関係がありませんので、中立で公平な記事を書くことに定評があります。
つまり、わざわざ投資家が企業を訪問したり取材しなくても、ここを読めばその企業の経営状況が分かるのです。
例えば2022年7月号の四季報によれば、フジテレビには以下のような解説記事が載っています。
これによれば、五輪関係の特需は消えたものの、主力であるテレビ広告収入は高水準を維持しており、関東ローカル番組やビル賃貸、ホテルリゾート業によって堅調な業績を維持していることが分かります。
ここで重要なのは【連続増配】という見出しと「番組制作費増加”こなし”営業増益続く」というコメントです。
通常、番組制作費が増加すれば、それが負担となって営業利益は減益か横ばいになるはずです。
というのも、あまり調子の良くない企業は売上が増加せず、費用増加に耐えきれないからです。
しかし、フジテレビの場合は番組制作費の増加を”こなし”た上で”営業増益が続く”というのです。
つまり、費用増加を上回るほど売上が増加しており、そのため営業利益増と増配が続いているということが分かります。
総合すると、フジテレビの業績は思いのほか好調だということが見て取れます。
このように、【増配】【堅調】【増益】といったポジティブなコメントがあれば、業績が好調で株価の上昇にも期待できます。
一方で、【不調】【減益】【赤字転落】といったコメントがあれば、業績が低迷しており、投資には不適格だという事が分かります。
解説記事欄を一読するだけで、投資して良さそうかどうかが分かるので非常に有益だと言えるでしょう。
業績
業績も重要な情報源です。
四季報では過去の業績に加え、独自で2期先までの業績を予想しています。
これにより今までの業績トレンドだけでなく、それが二期先まで続きそうかどうかについてある程度知ることが出来ます。
もちろん予想は予想に過ぎないので完全に信用することはできませんが、かといって大外れすることもあまり無いので、参考になるでしょう。
財務
財務情報も見逃せません。
財務にはROEやROAといったお馴染みの指標のほか、キャッシュフローや自己資本比率、有利子負債が記載されています。
ROE(自己資本利益率)を表しており、株主から集めた資金でどれだけ効率良く利益を生み出しているかが分かります。
キャッシュフローは現金がどのように流れているのかを表しています。
つまり、どこから現金を調達して、どこに現金をつぎ込んでいるのか、という文字通り「お金の流れ」が見えてきます。
そのほか、総資産額、自己資本、有利子負債、現金等を見ることで、その企業が倒産しそうかについてもある程度分かります。
例えば、営業キャッシュフローの赤字が続いているときは、本業が上手くいっておらず現金の流出が続いていることを表しており、それがそのまま続くならジリ貧になります。
また、有利子負債(その企業が返すべきお金)が現金等(その企業が持っている現金)に比べてあまりにも多すぎればいずれ返済できずに不渡りを出す可能性が高いことが分かります。
このように、財務欄を読むことでその企業の足元がふらついているかどうかを調べることが出来ますので、倒産しかけている会社にうっかり投資するようなことがなくなるでしょう。
チャート
チャートでは月足チャートが表示されています。
これにより中期的な株価位置とおおよそのトレンドが把握できます。
見てほしいのはチャートが右肩上がりになっているかどうかです。
月足チャートが右肩上がりという事は、多くの投資家から継続的に買われているという事であり、今後もしばらくは買いが続くと予想できるからです。
見るべきポイント
以上、四季報の見方について説明しました。
四季報では様々な要素がありますが、特に見てほしいのは以下の三点です。
- 特色
- 解説記事
- 財務
投資において業績とチャートは非常に重要ですが、四季報でなくとも見れる情報なので、四季報を見るときに殊更意識してみる必要はありません。
しかし、特色と解説記事は四季報でなければ読むことが出来ない情報であり、独自性が高いので必読と言えます。
また、財務状況もコンパクトにまとまっているため一読の価値有りです。
財務情報は有価証券報告書にも書かれているのですが、四季報ほど簡潔には書かれていないため読みこなすのが難しいという面があります。
そのため、これらの情報は四季報を読むときに特に注目すべきポイントです。
特に【解説記事】は長年その企業を徹底取材している記者が独自に執筆した内容であり、内容の客観性と信頼性には定評があります。
なかには【解説記事】を読むためだけに四季報を購読している投資家もいるくらいです。
それほど参考になるので、初めて四季報を読む人はまず【解説記事】のところだけでも読んでみると良いでしょう。
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