株価指標はEPSだけ覚えればOKです

基礎理論

投資の勉強をするとPERだのROAだのと、アルファベット3文字の用語がズラズラと書かれているのを目にすることがあります。

投資を始めたばかりの人は、それら全てを覚えなければ投資は出来ないと思い込んでしまい、挫折してしまう人もいるようです。

確かにそれらの用語全てを覚えられるならそれに越したことはありませんが、何もそれら全てを覚えなければ投資ができないというわけではありません。

投資の専門家になりたいなら話は別ですが、単に株の売買で利益を出したいだけなら、覚えるべき財務指標は一つだけです。

それは「EPS」です。

用語を覚えるのが面倒という人でもEPSだけは是非覚えて頂きたいので、今回はEPSという用語の意味と、それが投資判断にどう活かされるのかについて解説したいと思います。

EPSとは?

EPSとは「Earnings Per Share」の略で、1株当たり純利益のことを指します。

例えば、発行済み株式数が100万株の企業が10億円の純利益を上げていた場合、この企業のEPSは以下のように計算されます。

EPS(1株当たり純利益)=10億円(当期純利益)÷100万株(発行済み株式数)=1000円

投資をやる上でこのEPSという数字は避けては通れない物です。

なぜEPSが重要なのか

なぜEPSがそこまで重要なのかというと、ほとんどの場合、株価はEPSの数字と連動しているからです。

なぜそんなことが言えるのか。

それは投資家の立場になってみれば分かります。

そもそも投資家が会社に対して最も気にしているのは「その会社がどれだけ稼いでくれるか」です。

そして、この問いに答えてくれる財務諸表こそがEPSだからです。

EPSを見れば公平に企業群を評価できる

投資家にとって、自分が投資しようとしている会社が車を作っている会社なのか、それともラーメンを作っている会社なのかは、最終的にはどうでもいいことです。

投資家にとって一番大事なことは「自分が投資した金額に対してその株がどれだけ自分を儲けさせてくれるか」という一点に尽きます。

あらゆる財務指標のなかでEPSだけが、その問いに真正面から答えてくれるのです。

この世には車を作る会社だけでなく、運送会社や製薬会社など多種多様な会社があります。

大企業や中小企業というくくりから分かるように、会社の規模にも違いがあります。

投資家はこの無数の会社から自分を儲けさせてくれる会社を見つけて投資しなければなりません。

そのためには業種も規模も違う会社同士を比較検討しなければなりません。

こういう時に便利なのがEPSなのです。

EPSは1株当たりの純利益を表すものなので、EPSを見ればその株がどれだけ稼いでくれるのかそのまますぐに分かります。

EPSは”1株当たりの”純利益なので、企業の規模が違っても関係ありませんし、最終的には数字同士の比較になるので、業種の違いも関係ありません。

つまり「会社がいくら儲かっているのか」という点にそのままズバリ答えてくれるのがEPSです。

この数字を比較することであらゆる企業を最終的な「収益力」という点で公平に比較することができます。

業績の上昇=EPSの上昇

投資家は「自分が投資した企業の業績が成長しているか」を気にしています。

ここで言う業績の成長とは、売上や利益が上昇しているかということですが、じゃあ素直に売上額や利益額の推移を見れば良いかというとそうでもないのです。

というのも、売上や利益が上昇していても会社によっては株式を新たに発行して事業規模を大きくしただけで、肝心の収益力はむしろ下がっていたりすることがあるからです。

投資家が気にしている業績の成長とは、事業規模の拡大ではなく収益力の拡大なのですから、利益額そのものの大小ではなく、それを一株当たりの数字に落とし込んで比較する必要があるのです。

したがって、投資家はEPSが上昇しているかを重視しており、この数字が上昇しているかどうかで業績の推移を見極めているのです。

EPSの上昇=株価の上昇

基本的に、株価が上昇する株というのはEPSが上昇している株と同義です。

投資家は儲かっている会社の株を買いたいのですから、当然といえば当然です。

文字に起こすと当たり前のように思えますが、意外とこの点を重視している投資家は少ないように思います。

よく話題の株を買って損したという個人投資家の話を聞きますが、よくよく聞いてみればEPSが減少傾向にあり一目で買うべきではないという判断がつく株で損をしていたりします。

極端な話、株を買うときはEPS一つだけ見ておけば間違いないという程に、この財務指標は強力です。

株を買うときに「新製品の売れ行きガー」とか「経営の効率化ガー」とかあれこれ言ったところで、結局のところ株の価値とは「どれだけ儲かっているのか」という一点に尽きるのですから、ごちゃごちゃ言わずにEPSを見れば良いという結論にたどり着きます。

したがって、あれこれ用語を覚えるくらいならEPSだけに絞って見た方がよっぽど正確に企業の業績を見極めることができるのです。

EPSを見てから株を買おう

結論は極めてシンプルで、「株を買うときはEPSを見てから買おう」という事になります。

業績の向上がEPSの上昇となり、EPSの上昇が株価の上昇となって表れるからです。

EPSで株を選ぶ際、まずEPSがマイナスになっている株は論外です。

EPSがマイナスということは純利益がマイナス、つまり赤字を計上している会社ということだからです。

また、過去に発表されたEPSの数字を時系列に並べれば、企業が成長しているのか停滞しているのかが一目瞭然となります。

株価の上昇には業績の向上が不可欠なのですから、買うべき株は必然的にEPSが上昇している株に絞られます。

EPSは決算短信を見れば一ページ目に書いてあるほか、四季報にも記載されていますので誰でもすぐにアクセスできます。

この一手間をかけるだけで投資の精度が格段に上昇しますので、今後株を買うときは是非EPSを確認してみて下さい。