[経験談] イナゴ投資は上手くいかないです
みなさんは「イナゴ投資」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
イナゴ投資とは「何らかの材料が出て急騰した株に対して短期間に売買を繰り返すこと」です。
例えば、コロナワクチンの開発に着手したという製薬会社の株は急騰しがちですが、そういった株価に影響が出そうなニュースが出た瞬間に急騰する株へ飛び乗っていち早く利益を抜いて脱出しようとすることです。
同じことを考えている個人投資家はたくさんいて、そういった材料株にはたくさんの個人投資家が群がります。
そして買いが買いを呼ぶ状況が続いて株価はさらに急騰していきます。
株を買っても最終的には利益確定の売り注文をしなければなりませんので、どこかの時点で大量の売り注文が出てきます。
大量の売り注文が出てくるとあっという間に株価が下がってしまいます。
その売り注文が出て株価が急落する前に利ザヤを抜くことができれば儲かるというわけです。
まるで大群で稲に群がり、食べ尽くすとすぐ次の場所へ飛び去って行くイナゴのようであることからイナゴ投資と言われています。
誰でも一度はやったことがあるかもしれませんが、こういった投資は大体にしてうまくいきません。
今回は自分の経験談も踏まえてイナゴ投資がうまくいかない理由について説明したいと思います。
これは過去の自分を戒めるとともに、読者に同じ失敗をしてほしくないからです。
もし今イナゴ投資をしている人がいたら、考えを改めるきっかけになればと思います。
イナゴ投資は簡単に儲かりそうに見えてしまう
初心者時代、投資で手っ取り早く儲けるには「急騰している株に飛び乗ってすぐに利益を抜けばいいじゃないか」と思っていました。
値上がりランキングを見れば分かると思いますが、株式市場には+20%みたいなストップ高にまで上がっていく株がほぼ毎日出現します。
これはイナゴ投資家が群がったチャートですが、見れば分かる通り、ある時点(材料が発表された時点)からすさまじい勢いで株価が上昇しています。
中には連日ストップ高近くまで値上がりし、たった一週間で株価が倍になる株も存在します。
その利ザヤ全てを取ることは出来ないでしょうが、その半分だけでも抜ければ毎日+10%以上の利益が取れるじゃないかというわけです。
加えて、そういった株を次から次へと回転売買していけばすぐに+100%の利益が積み上がるじゃないかと思っていたのです。
もちろん急騰した株は急落しやすいので危険ですが、すぐに飛び乗ってすぐに利ザヤを抜いて脱出すればいいじゃないかと素人ながらに考えていました。
時間をかけて決算書を見たり財務指標を分析するよりも、いち早くトレードする技術の方が重要で、そういった技術を持たない人が妥協してやるのがファンダメンタル分析なんだろうとも思っていました。
時間がかかって退屈そうなファンダメンタル投資とは違ってイナゴ投資は実にシンプルです。
要は、急騰している株に飛び乗って利益が出たらすぐに売ればいいのです。
至極単純ですが、瞬時に数%、うまくいけば簡単に10%以上の利益が手に入るので楽して儲かりそうな投資法に見えてしまうのです。
イナゴ投資で消耗する日々
株式投資というのは、買った値段より高く売れれば儲かるゲームです。
したがって乱暴に言ってしまえば、株式投資とは急騰している株からいかに早く利ザヤを抜き取れるかを競い合うゲームとも言えます。
あれこれ企業の業績や景気や政策を考慮する必要もなく、ただ素早くトレードすれば儲かるというわけです。
そのため、初心者時代は急騰株にイナゴする日々に明け暮れていました。
しかしイナゴ投資による結果は散々でした。
というのも、材料が出て自分が飛び乗ろうとする頃には既に急騰し過ぎていて、自分が買った途端に株価が急落するというのが頻発したからです。
せっかく何回もイナゴ投資を成功させて儲けたお金も、そういったことが一回起こると全て吐き出してしまいます。
イナゴ投資だと、確かに儲かるときは手っ取り早く儲かるのですが、損するときもまた手っ取り早く損してしまうので、トータルでの損益はマイナスだったのです。
数学的に明らかなことですが、トータルでの損益がマイナスだと資産額は加速度的に減少してきます。
結局、数年間イナゴ投資をやってみた結果、1円も利益が残っていませんでした。
ようやく目が覚める
あれだけトレードに明け暮れても、手元には全く利益が残っていない状況を見て流石に目が覚めました。
「イナゴ投資は割に合わない」と。
血眼になって利益を追いかけて何日も何百回もトレードをしましたが、結局は何も手元に残らなかったのです。
流石にショックを受けて、このままでは駄目だと考えを改めました。
その後たくさんの本を読んだり試行錯誤をした結果、納得のいく投資法を見つけることができたので良かったですが、今思うとイナゴ投資をしていた時間は全くの無駄でした。
儲けを求めて次から次へと様々な株へ飛び乗っていましたが、結局は誰かの養分にしかなっていなかったのです。
イナゴ投資がうまくいかない理由
なぜイナゴ投資がうまくいかないのか。
目が覚めた後で冷静に考えてみたら、それは当然のことだと気づきました。
イナゴ投資がうまくいかない理由を簡潔にまとめると以下の3点が挙げられます。
胴元がいる
そもそもイナゴ投資では、材料が公表される前に情報を入手して予め大量に株を買い集めている人たちがいるのです。
彼らの事を「胴元」と言います。
胴元は材料が公表されて株価が急騰したら、群がってきたイナゴ投資家に買い集めておいた株を売りつけます。
そして十分に急騰したら一気に売り注文を浴びせて利益確定して逃げます。
後はイナゴタワーが崩れ去っていくのをあざ笑っていればいいという訳です。
このように、そもそもイナゴ投資をやる背景には胴元がいて、胴元だけが儲かる仕組みになっているのです。
運良く利益だけ抜いて勝ち逃げできるイナゴもいますが、そんなものは胴元から見れば大した問題ではありません。
運の良いイナゴが多少混ざっているだけで、基本的にイナゴ投資家は胴元の養分でしかないのです。
自分が運の良いイナゴになれれば良いですが、いつも運が良いとは限らず、イナゴ投資を続ける限り遅かれ早かれ胴元の養分になるしかないのです。
利益幅が損失幅を上回る
もちろんイナゴ投資でも全く利益を上げられないという訳ではありません。
多少は利益を上げられます。
しかし急落幅があまりにも大きく、一度でも売り逃げてしまうとそれまでに上げた利益のほぼ全てを失うという事なってしまうのです。
チャートを見れば分かりますが、急騰するペースに比べて急落するペースは倍以上早いです。
これはいち早く利益を確定して逃げたいという個人投資家の心理の表れです。
つまりイナゴ投資とは、誰が最後まで残ってしまうかというババ抜きゲームをしているということです。
運良くババを他人に押し付けて逃げられればいいですが、一度でもババを引かされると逃げきれず、それまでの利益は全て消えてしまうのです。
こんなことをやっていればお金が残らないのも当然と言えます。
予見性・再現性が無い
イナゴ投資はシンプルで、材料が出て急騰した株に飛び乗ってすぐに売るというものでした。
しかし、この投資法には全く再現性がありません。
例えばファンダメンタル投資なら株価が上がる根拠として利益や売上の成長を挙げられます。
業績が向上すれば株価も上がりやすいという傾向から、値上がりする株を予想した上で株を買えるというわけです。
テクニカル投資ならトレンドや出来高から、株価が上がりやすいパターンを見つけ出せます。
しかしイナゴ投資はどうでしょうか。
イナゴ投資には予見性・再現性が全くありません。
そもそも材料が出ることを予見するための要素はなく、一度材料が出た株にはまた材料が出やすいという傾向もありません。
イナゴ投資をしようと思ったら、結局は材料が出た後で飛び乗るしかなく、どういった株が次に材料が発表されて急騰するのかは予見不可能であるため、イナゴ投資によって利益を上げることには再現性がありません。
イナゴ投資からの卒業
私はそういった経験から今ではイナゴ投資を卒業しています。
手っ取り早く儲けようとすると手っ取り早く損するということが身に染みて分かったからです。
それよりも、業績を見て長期的に株価の上昇が見込める株を保有することで資産を増やす方がはるかに安全で再現性が高い手法だと実感しています。
もしあなたが今イナゴ投資をしているなら、私の二の舞にならないことを祈っています。
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