投資家が運の良し悪しを気にしてはいけない理由

基礎理論

投資をやっている時に運の良し悪しを気にする人がいます。。

今日の運勢は大吉だったから株価は上がるだろうとか、最近悪いことばかり続いているから株価が下がる前に売っておこうという具合です。

つまり、株価が上がれば「運が良い」、株価が下がれば「運悪く下がってしまった」というわけです。

一般人が占いや運勢を気にするのは問題ありませんが、投資家が運の良し悪しを気にするようではいけません。

今回は投資と運の関係性について解説し、投資家が運の良し悪しを気にしてはいけない理由について説明したいと思います。

投資家が運を気にしてはいけない理由

運とは確率上の偏りに過ぎない

そもそも「運」という言葉の正体は「確率上の偏り」のことです。

例えばコインを1回投げたとき表が出る確率は50%ですが、10回投げた時に5回表が出て5回裏が出るとは限りません。

実際は表が6~8回出たり、あるいは2~3回しかでないこともあります。

確率的には表が5回出るべきところ、そうならないことを運が良かったとか悪かったと言っているにすぎません。

株についても同様です。

株価は短期的には上がりも下がりもするものであり、上がるか下がるかは一見50%ずつのように思えますが、10日連続で上昇することもあれば10日連続で下落することも起こりうるのです。

物事は全て確率通りにいくものではなく、短期的には確率的に起こりにくいことだって起こりうることを知っていなければなりません。

そしてそれらは確率上の誤差に過ぎず、そこに運の良し悪しも何も関係ありません。

統計学的には観測されてもおかしくないことなのです。

大数の法則

確率論・統計学における基本定理として「大数の法則」というものがあります。

これは「一見ランダムに思える事象であっても、試行回数を増やせば増やすほど特定の値へと収束していく」というものです。

ここでいう特定の値というのは「確率的にそうなるはずだ」と期待される数字の事を指します。

例えば、先ほどのコイン投げの例でいえば表が出る確率である「1/2」という数字のことです。

コインを投げた回数が10回程度であれば、表が6~8回出たり、あるいは2~3回しかでないこともあり、表が出る確率1/2から離れた結果が出てしまう事があります。

しかしそれは単に確率論における誤差に過ぎず、コインを10,000回ほど投げれば誤差率はほぼなくなっていき、表が出る確率は1/2へと収束していきます。

コイントスを複数回行ったときの確率分布関数

これを大数の法則と呼びます。

これは、コイン投げのように一見偶発的に起こりうる事象も、大量に観測することによってその確率上の誤差は限りなく小さくなるという事を意味しています。

そしてこの法則は株価にも適用されるのです。

最終的に株価は業績に収束する

前述のとおり、株価は短期的には上がりも下がりもするものです。

だからこそ「投資なんて所詮運任せのギャンブルでしかない」と安易に考えてしまう人が少なくありません。

しかし、株価は最終的には業績に見合った数字へと収束していきます

例えば毎年赤字を垂れ流している会社の株価が上がることは、短期的にはあり得ても長期的にはほぼあり得ないでしょう。

逆に、毎年業績を向上させ成長しつつある会社の株価がいつまでも安値で放置されるということもほぼ起こりえないでしょう。

このように、短期的に見ればランダムに見える株の値動きですが、長期的な視点に立って見てみるとほぼ業績通りの値動きをしていることに気づきます。

つまり、”大数の法則が十分に作用するだけの期間で見れば”株価はほぼ業績から予想される数字へと収束していくという事です。

したがって株価の上がり下がりがランダムに見えるのは、その人の観測回数がまだ少ない為に一時的な確率上の誤差を観測しただけに過ぎないということです。

運ではなく大数の法則を味方につけよう

株価というのは短期的には上がりも下がりもするものですが、それは単に確率上の誤差に過ぎないことを説明しました。

つまり株価の値動きがランダムに見えるのだとしたら、それは観測期間が短く、大数の法則が十分に作用しない程度の回数しか観測していないだけという事になります。

株価というのは短期的には上がりも下がりもするのですから、短期的な上げ下げを予想して投資を行うのであればそれは確かに「運任せのギャンブル」と言えるでしょう。

しかし、大数の法則が作用するだけの期間を前提に行うのであれば、投資はギャンブルではなくなります

当サイトが短期投資ではなく中長期投資を推奨しているのは、まさにこのためです。

投資を短期的に考えるのであれば、運という確率上の誤差に振り回されることになりますが、それでは運を味方につけない限り望む結果は得られません。

しかし、中長期スパンで投資を考えるならば、大数の法則が味方に付きます。

株価は業績通りの数字に収束する」という前提の下で、投資戦略を組み立てられるようになるのです。

そうすれば予測不能なギャンブルに思えた投資にも、規則性や合理性を見出すことができるようになります。

その結果、「運の良し悪し」自体、そもそも気にする必要がないという事に気づくはずです。

そしてこれこそが「投資家が運の良し悪しを気にしてはいけない理由」そのものなのです。