切っても切り離せない投資と感情の話
「株をやるためには感情を無にしなければならない」
そう思っていた時期が私にもありました。
投資とは極論、株価が上がったか下がったかだけですので、そこにいちいち感情を介在させるのは馬鹿げている。
そんなことは分かってはいますが、どうしても人間は目の前の資産増減に一喜一憂してしまいがちです。
では、株式投資をする上で自分の感情とどのように折り合いをつけていけばいいのでしょうか。
今回はそういった株と感情の話をしたいと思います。
感情にはレベルがある
これまで投資をしてきた経験と他の投資家を多く見てきた感想として、投資家の感情にはレベルがあると実感しました。
そして投資家としての経験を積んでいくごとに、その感情レベルが上がっていくものだと思っています。
人間である以上、いきなり感情を無にすることなんてできやしません。
(もし感情を無にできるといっている人がいるとすれば中二病を卒業できていない人くらいだろうと思います)
したがって、「株式投資をやる上で自分の感情とどう折り合いをつけるべきか」という問題に関しては「経験を積んで少しずつレベルを上げていくしかない」というのが私の結論になります。
感情にはレベルがあること知り、それを上げていく必要があると認識するだけでも投資家として成長していけると思います。
そこで、投資家の感情にはどういうレベルがあるのかについて説明したいと思います。
レベル1:一喜一憂
最初のレベルは「一喜一憂」です。
このレベルに居る投資家は株価が上がれば喜び、下がれば憂鬱になっていまいます。
それは人間として自然な感情なので一般人としては問題ないですが、投資家としては最も感情レベルが低い部類の人間になります。
この人の感情は株価に支配されており、自分では全くコントロールできていません。
株価が上がれば「この利益で何を買おうかな」と、捕らぬ狸の皮算用をしてしまいます。
株価が下がれば「この損失がなければ旅行に行けていたのに」と、失ってしまったお金に後悔を馳せます。
このように、レベル1の投資家は「お金=物・サービス」と結び付けている節があります。
そのため、株価が上下するたびに自分の欲しい物を思い浮かべてしまい、思考にノイズが混じります。
本来であれば株価の動向を左右する情報、つまりトレンドや業績に思考を集中させるべきなのに、いちいち自分の欲しい物やお金そのものを考えてしまうので、思考レベルが下がってしまいます。
そして感情と思考を切り分ける術を身に着けていないので、感情任せに売買して利益を減らしたり損失を拡大させてしまうことがよくあります。
レベル1の投資家が大成するのは極めて難しいと思います。
なぜなら、株価が上下することなんて日常茶飯事なのに、その度に感情が揺さぶられてしまい、精神的に疲弊していくだけだからです。
投資家として成熟していくためには投資を長年続けていく必要がありますが、このレベルにとどまっている人は遅かれ早かれ株式市場から退場していくことになります。
自分の感情レベルを上げる必要があると自覚しない限りは、どこかで心が折れてしまうでしょう。
レベル2:気にしないように頑張る
レベル2の投資家は株価の上下を気にしないように頑張ります。
このレベルに居る投資家は株価の上下に一喜一憂していてはいけないと認識し、レベル1を抜け出した人たちです。
しかし、あくまで株価の上下を気にしないように頑張っているだけで、内心はまだ株価の上下に心が動いてしまい、思考にノイズが混じってしまいます。
レベル1のように株価が上がったら有頂天になり、下がれば激怒するほどではありませんが、まだ感情のコントロールがうまくいっていません。
株価の上下によって自分の欲しい物が頭をちらつき、自分の感情と思考を切り分けることができず、思考レベルが下がってしまいます。
そのため株価が上下するたびに精神的に疲弊してしまいます。
恐らく多くの投資家がこのレベル2に該当しているのではないかと思います。
このレベルでも投資家としてやっていけないわけではないですが、これからもずっと投資をやっていくつもりなら、もう少し感情レベルを上げたいところです。
レベル3:感情と思考を切り離し始める
レベル3の投資家は「株価の上下を気にしないようすること」を辞めます。
レベル2のように株価の上下を気にしないようにすることを諦めて、自分の感情をあるがままに受け入れるレベルにまで到達したのです。
この人たちはレベル2に居た頃に株価の上下を気にしないように頑張り続けた結果、「完全に感情を無にすること」が不可能であることに気づいた人たちです。
このレベルになると感情と思考を切り離すことを覚え始め、株価の上下に感情が揺さぶられるものの、それが思考や投資行動に悪影響を及ぼさないようになります。
このレベルに到達する人はかなり少ないと思います。
「株価にいちいち感情を揺さぶられてはいけない」と口で言うのは簡単ですが「重要なことは感情を消すことではなく、感情を投資行動から切り離すこと」に気づける人はなかなかいないからです。
このレベルにまで達した人たちは必然的に自分なりの投資ルールを持ち始めます。
なぜなら感情と投資行動を切り離すこととはつまり、感情とは別の行動基準(ルール)を持つことを意味するからです。
人間である以上、感情が揺さぶられてしまうことは避けられませんが、レベル3の人たちは、感情に左右されることなく投資行動をとれるようになるのです。
勝ち組投資家は遅かれ早かれこのレベルにまで達します。
レベル4:機械的になる
さらにレベルが上がってくると感情と思考は切れ離され、思考や行動が機械的になります。
自分なりの投資ルールが確立され、感情ではなくルールに従って投資活動を行うようになるからです。
人間である以上、感情が消えたわけではありませんが、投資判断に感情が介入することはなく、機械的に株の売買を行います。
損切りすべき時は淡々と損切りの注文を入れられるようになるので、大きな損失を出すこともなくなり、精神的にも口座残高的にも安定し始めます。
儲かったからと言って自慢することはなく、損したからと言って不貞腐れることもなく、人格的にも成長しています。
安定して好成績を出している投資家の心境は、このレベルに達しているのがほとんどです。
レベル5:神
感情レベルが極まってくると、いよいよ神の領域に到達します。
ここまで来ると、もはや感情が投資判断に介入する余地は皆無です。
長年の経験によって感情がほぼ消え失せたか、あっても投資判断には全く影響を及ぼさないようになっています。
投資判断全てがルールや合理性に基づいたものとなり、株の売買の際に表情一つ動かなくなります。
株価や口座残高をお金やサービスと結び付けることはなく、単なる数字としか見なさなくなります。
普通の人は資産が10倍になったら飛び上がるくらい嬉しいものですが、このレベルの人にとっては「(口座残高の)数字が1桁増えた」程度のことでしかありません。
また、普通の人は数億円もの損失を抱えたら寝られなくなるでしょうが、このレベルの人なら3食食べた後ぐっすり寝られるようになります。
さらに自分の所持金すら単なる数字としか思っていないので、数億円単位の損切り注文も顔色一つ変えずに実行することができます。
個人資産が5億円を超える人(いわゆる超富裕層)の多くは、このレベルに達しています。
まとめ:少しずつ感情レベルを上げよう
人間なら誰でも感情がありますが、それを投資活動とどう折り合いつけていくかは投資家にとって重要な問題です。
結論としては少しずつ感情のレベルをあげていくしかないのですが、個人的にはレベル2とレベル3の間に大きな壁があるように思います。
最初の頃は誰でも株価変動に感情が揺さぶられるものです。
その時に「感情=なくさなければならない物」と思い込んでしまうと、レベル2から抜け出せなくなります。
人間である以上、完全に感情をなくすことはできないのですから、感情を消そうとするとうまくいきません。
そうではなく、自分の感情をあるがままに受け入れた上で、それが投資判断に悪影響を及ぼさないようにすることが大事だということです。
そして感情と思考を切り離す必要性に気づけば、自然と投資ルールを作ってそれに従うようになります。
それは感情から合理性へ判断基準を移すということでもあります。
つまり、感情レベルを上げていけば自ずと自分の投資レベルも上がっていきます。
私自身、今まで感情任せに売買しては多額の損失を出してしまった経験もあり、できるだけ上のレベルを目指していきたいと思います。
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