「確率」で物事を考えられる投資家になろう

基礎理論,知識

投資をギャンブルだと思っている人は少なくありません。

投資は一攫千金の為に大金を投じるものだと思って全財産をつぎ込んで破産したり、運試しと称して適当に株を買ってみては損する人がいるのです。

あるいは、投資はギャンブルと同じく危険なものだと考えて一切投資などせず貯金しかしない人もいます。

もちろん投資に対してどんな思想を持つかは個人の自由ですし、投資をするしないも個人の自由です。

しかし、日本では約30年間経済成長が止まっており、物価は上がり続けても給与所得はほとんど上がらないという有様です。

そのため、望むと望まないに関わらず、これからの社会では投資活動が必須になります。

そのためには、あらゆる物事を「確率」で考えられるようになる必要があります

この「確率で物を考える」というのは投資家として必須の思考回路です。

これを身に付けられる人とそうでない人では、生涯にわたって大きな差がつきますので、今回紹介する内容を覚えておきましょう。

投資はギャンブル性がある?

実を言うと、投資にはギャンブルに似た所があります。

要は「買った株が上がれば当たり、下がれば外れのギャンブル」というわけです。

その点だけを見れば確かに「投資=ギャンブル」ですが、だからと言って投資がギャンブルのように危険だというのは安易な考えです。

確かに投資にはギャンブルに似た所がありますが、投資がギャンブルに似た要素があるということは、投資にもまたギャンブルの攻略法が使えるのです。

ギャンブルは「確率」で攻略できる

皆さんはギャンブルで大金を稼いでいる人が存在することをご存じでしょうか。

それは保険会社やカジノ、ポーカープロや麻雀プロです。

彼らは、運任せに決まること(言ってしまえばギャンブル)を毎日しているにも関わらず、毎年安定して大金を稼ぎだしています

例えば、保険に加入している人が事故や病気になるのかどうかや、ギャンブルをしているときに良い手が入って上がれるかどうかは予見不可能であり、完全に運任せです。

であれば彼らの収入もまた運任せになるはずなのですが、実際にはそうはならず、彼らは毎年安定した収入を得ています。

なぜそうなるかというと、彼らはギャンブルの攻略法である「確率で物事を考えること」ができるからなのです。

そしてその「確率で物事を考えること」こそがギャンブルを攻略するための唯一の方法なのです。

さらに言えば、ギャンブルに似た要素を持つ投資もまた、「確率」によって攻略することが可能なのです。

不確実な結果から確実な利益を得る方法

保険会社やポーカープロなどは、ギャンブルという不確実な結果から毎年確実に利益を得ていることを話しました。

彼らの武器となる確率の考え方とはズバリ「期待値」と「大数の法則」です。

期待値計算による優位性の確保

期待値とは、1回の試行によって得られる値の平均値の事です。

例えばサイコロを1回振ったとき、出た目の数×100円を得られるゲームがあるとします。

このゲームを1回行ったときに得られると予想される金額は、各1~6が出たときの金額を平均した350円となります。

ここでいう350円という数字のことを「期待値」と言います。

期待値を計算することで、そのゲームをやってみる価値があるのかどうかが分かります

例えば、先ほどのサイコロゲームを1回やるための費用が300円だったとしたらどうでしょう。

期待値を計算すると、

350円 - 300円 = +50円

となります。

つまり何が言いたいかというと、このゲームは1回するごとに50円の収入が期待できるということです。

逆に、このゲームを1回するために必要な金額が400円だったらどうでしょう。

同じく期待値を計算すると

350円 - 400円 = -50円

となります。

これは何が言いたいかというと、今回の場合では1回ゲームを行うごとに50円失うことが予想されるということです。

これらの計算結果から何が言えるのかというと、このサイコロゲームは、かかる費用が300円ならやる価値があり、400円の場合はやる価値がないということです。

この期待値計算はギャンブルにも応用できます。

例として自動車保険会社を挙げます。

自動車保険会社は「保険の加入者が事故をするかどうか」でギャンブルをします。

すなわち、

保険の加入者が事故を起こせば保険金を支払う必要があるので負け、加入者が事故を起こさなければ保険料貰い得で勝ち

というギャンブルです。

例えば、ある保険の加入者(以下、Aさん)が1年間の間に事故を起こす確率は10%で、事故を起こした時には平均的に50万円の支払いが必要になるとしましょう。

この時の期待値は以下のように計算できます。

50万円 × 0.1 = 5万円

このことから何が言えるのかというと、Aさんを保険に加入させたとき、保険会社は1年間当たり5万円の支払いが予想されるということです。

すなわち、保険会社からしてみれば、Aさんが1年あたり5万円以上の保険料を支払うなら自社の保険に加入させる価値があり、5万円以下の保険料であれば加入させる価値がないということです。

保険会社はそのことを見越して、Aさんの保険料を月額5,000円(年間6万円)以上に設定するでしょう。

そうすれば、Aさんから1年あたり1万円以上の収入が期待できるからです。

このように、事故を起こすか起こさないかという運任せのギャンブルであっても、期待値がプラスになるよう設定しておけば、儲けることが可能ということです。

大数の法則による必然性の確保

大数の法則とは「多くの試行を重ねることにより事象の出現回数が理論上の値に近づく」という法則の事です。

例えば、サイコロを1回振ったときに3が出る確率は1/6ですが、6回振っても3が1回も出ないことはあり得ます。

しかし、1万回、10万回とサイコロを振っていけば3が出る確率はほぼ1/6に収束していくというのが大数の法則です。

ギャンブルで儲ける人たちは、この大数の法則という武器によって毎年安定して利益を稼いでいます。

なぜ大数の法則が彼らにとって大きな武器になるかというと、

自分に優位性があり、十分な試行回数があるならば、ほぼ確実に儲けることができる

という事実を保証しているからです。

このことを先ほどの自動車保険会社の例で説明しましょう。

いくら保険料の設定によって期待値がプラスになったとしても、実際にAさんに事故を起こされると保険会社には50万円の保険金支払いが発生します。

つまり、Aさん1人と保険会社とのギャンブル勝負だと、保険会社としては保険料収入6万円と保険金支払い50万円を合わせて、合計44万円の赤字になり保険会社側は大負けというわけです。

しかし、Aさんと同様の保険加入者が1万人いたらどうでしょうか。

いくら何でも加入者1万人が全員交通事故を起こすという事はほとんどあり得ないでしょう。

統計によれば、1年間で交通事故を起こしてしまう確率はおよそ1%であることが知られています。

よって保険加入者1万人のうち、保険金を支払うことになるのは理論上100人程度だということになります。

このことを踏まえて保険会社側の期待値を計算すると以下のようになります。

6万円(1年当たりの保険料)×1万人 – 50万円×100人 = +5億5000万円

つまり保険会社側としては、Aさん含む事故を起こした100人相手のギャンブルには負けたとしても、加入者1万人相手のギャンブルとして考えてみれば5億5000万円の大勝ちというわけです。

もちろんこれは理論上の数字であり、実際にはもっと多くの人が事故を起こしたり、50万円以上の支払いが必要な場合もあるでしょう。

しかし、それは誤差の範囲でしかありません。

仮に事故を起こす人数が倍だったとしても、それでもなお保険会社には+5億円の利益が出ます。

つまり保険会社としては、自社にとって期待値がプラスになる保険を1万人相手に加入させた時点で勝ちが決まったギャンブルだったという事になります。

(※実際の保険会社は人件費や広告費などの経費負担がありますので、この5億5000万円がそのまま利益となるわけではありません)

このように、局所的に見れば負けることがあっても、自分にとって優位なゲーム(=期待値がプラスになること)を数多くこなすならば、ほぼ確実に勝てるということになります。

これこそが大数の法則です。

そしてこの「期待値」と「大数の法則」の組み合わせこそが、ギャンブルにおける必勝法なのです。

投資にも確率の考え方は有効

投資とギャンブルには似た所があるならば、投資にもまたギャンブルの必勝法が使えます。

すなわち、

自分にとって期待値がプラスになる取引を見つけてそれを数多くこなせば、ほぼ確実に勝てる

ということです。

ここでいう期待値がプラスになる取引というのは、例えば「業績が良い会社は株価が上がりやすいから買う」とか「特定のチャートパターンをした株は値下がりしやすいから空売りする」という様な自分にとって有利と思われる取引の事です。

もちろん個々の投資結果を見れば、失敗して損切りに終わる投資も多いでしょう。

しかし、それを気にせず数多くの投資をこなしていけば、大数の法則によって口座残高は”ほぼ確実に”増えていくでしょう。

そう考えてみると、個々の投資で負けて損切りすることは大した意味はないという事に気づくはずです。

保険会社が契約者の誰が事故を起こすのかを知る必要がないのと同様、投資家もどの株で損切りすることになるのかを知る必要はないからです。

大事なのは個々の投資結果ではなく、数多くの投資をこなした時の全体的な収支結果です。

そしてそれは、大数の法則によってほぼ確実にプラスになることが保証されています。

だからこそ、投資はギャンブルと同様に「確率で物事を考えること」によって攻略できるという事なのです。

まとめ:「確率」で投資を攻略しよう

以上のように、ギャンブルには攻略法があり、投資にもその攻略法が有効という事を説明しました。

その攻略法こそが「確率で物事を考える」ということです。

投資はギャンブルだと思って投資を避けている人はいますが、投資がギャンブルだというのなら、なおさら「確率」で物事を考えてみるのはどうでしょうか。

そうすることによって投資にも攻略法があるということに気づくはずです。

現に、保険会社やポーカープロは「確率」によって毎年安定して儲けているのです。

そして投資家もまた、「確率」によって儲けることができるのです。