[害悪] 役に立たない投資格言と投資常識を一刀両断
どんな業界にも格言や常識というものがあります。
その多くは業界の真理や身に付けておく知識を的確に言い表しており、耳を傾ける価値があります。
もちろん投資業界にもそういった格言や常識が多く存在します。
しかし中には当てにならないものや、現実に即しておらず害悪でしかない言葉も存在しています。
投資初心者の多くは、何が正しくて何が間違っているのかを判断できるだけの経験が足りておらず、そういった間違った格言や常識に振り回されているのは見るに忍びないものがあります。
そこで今回は、間違っていると思われる投資格言や常識について、その是非を解説してみたいと思います。
まだはもうなり、もうはまだなり
これは相場観を言い表した言葉であり、
「まだ上がりそうというときはもう上がらないし、もう上がりそうにもないと思ったときはまだ上がる」
という意味です。
しかし、この言葉は間違っているとか以前に、そもそも何の価値もない言葉です。
なぜなら、この言葉の論理構造は「A=B」、「B=A」という形になっていますが、これは循環論法と呼ばれる詭弁だからです。
この手の言葉は、A=B=A=B=A・・・
というふうに無限に循環していくため、結局何が言いたいのかが不明になるのです。
そもそもA=BかつB=Aならば、結局はA=A、B=Bと言っているに過ぎず何の論証にもなっていません。
しかも「まだ上がりそう」とか「もう上がりそうにない」というのは単なる主観であり、主観を前提に述べただけの言葉に価値などあろうはずもありません。
投資家が知りたいのは
「どういうときにはまだ上がるのか」
「どういうときにはもう上がらないのか」
という点ですが、この言葉からは投資すべきタイミングについて何も見えてきません。
つまり、結局は単なる詭弁に過ぎず、何の役にも立たない言葉です。
安く買って高く売れ
投資で儲けるための方法を聞かれた時によく言われるのがこの言葉です。
投資の世界で最も多くの人を惑わせている言葉を挙げろと言われたら、この言葉を挙げるでしょう。
一見すると何も間違っていないように思えますが、この言葉には重大な問題があります。
それは前提条件が不明であることです。
この言葉からは二つの条件が読み取れます。
それは、
- 安く買うこと
- 高く売ること
の二点です。
何も間違っていないじゃないかと思うかもしれませんが、よくよく考えてみて下さい。
この言葉からは、
「何と比べて安いと判断すればいいのか」
「何を基準に高いと判断すればいいのか」
という前提条件が不明です。
例えば、新車が1万円で売られていたら誰でも安いと思うでしょう。
私たちは新車の平均価格が数百万円であること(=前提条件)を知っているので、1万円という数字を見たらすぐに安いと判断することができます。
しかし、新株が1万円で売りに出されたら、これは果たして安いと判断して良いのでしょうか。
しかし株には平均価格も定価もないため、何が安くて何が高いのかは誰にも分からないことなのです。
では、1000円だった株が800円に下がったら安くなったと判断して買えばいいのでしょうか。
確かに800円という株価は1000円よりも数字的に安いのは間違いありません。
しかし、この株を800円で買った後700円に値下がりしたとしたらどうでしょう。
800円という株価は1000円という価格と比べて確かに安かったのですが、安いと思って買った800円という株価は、実はまだ100円分高かったのです。
つまり、安いと思って買ったにもかかわらず実際は高く買ってしまったことになります。
こう考えてみると、安くなったから買うという判断基準がそもそも間違っていたことになります。
次に、1000円で買った株が1200円に値上がりした場合を考えてみましょう。
今回の場合、1200円の株を200円分安く買ったことになりますし、今売れば買った株を200円分高く売れることになります。
今度はなかなか良さそうに思えるでしょう。
すなわち、「(200円分)安く買って、(200円分)高く売れる」からです。
しかし、1000円で買った株を1200円で売った後、この株がさらに値上がりして3000円になったとしたらどうでしょう。
確かに1200円という株価は1000円という株価よりも高かったため、1200円で売るという判断は間違いではないように思えました。
しかし実際はその後3000円まで値上がりする株を1200円で売ったことになるため、実質的には1800円分も安く売ってしまったことになります。
つまり、高くなったから売ったという判断は間違っていたことになります。
このように考えてみると、そもそも安い・高いという判断基準それ自体が実は曖昧だという事に気づくでしょう。
「安く買って高く売れ」とは言いますが、そもそも何を基準にして安い・高いかを判断すればいいのかが分からない以上、この言葉には何の意味もないことになります。
強いて言うならば「(将来の株価よりも)安く買って高く売れ」という事になりますが、将来の株価がどうやったら分かるのかが提示されない以上、この言葉には意味がありません。
将来の株価という未知の情報を基準にしても、やはり前提条件が不明ということには変わりがないからです。
つまり、結論としては「安く買って高く売れ」という言葉は何の役にも立たないという事です。
人の行く裏に道あり花の山
個人的に最も害悪だと思う投資格言はこれです。
意味としては、
「株式市場で利益を得るためには他人とは反対の売買をしたり、他人が注目していない株に注目するといった逆張り行動が大事だ」
という内容です。
他にも、「相場師は孤独を愛す」とか「人が売るときに買い、人が買うときには売れ」といった類似の言葉もあります。
要するに「株で儲けたかったら大衆とは逆を行く逆張り精神こそが大切だ」と言っているわけです。
一見すると説得力があってもっともらしく聞こえます。
しかし、この言葉ほど多くの投資家にとって害になる言葉はないと思います。
なぜなら、株式市場おいて逆張りは基本的に間違った戦略だからです。
私自身、この言葉のせいで投資を始めてから3年間は負けっぱなしだったので個人的な恨みもあります。
なぜ基本的に逆張りが間違っていると言えるのかというと、株式市場には美人投票の性質があるからです。
すなわち、株式市場では自分が良いと思った株ではなく、大勢の人が良いと思った株が高く評価される場所だという事です。
株価が上昇するためには大勢の人がその株を高く評価して買ってくれなければなりません。
どんなに自分が良い株だと思っても、他の人が買わない限り株価は上昇しないのです。
したがって、他人が買わない株を買ったところでいつまで経っても値上がりしない株を抱き続けることになるだけで、儲けにはつながりません。
それどころか、他人が欲しくない株は買われるどころか売られることになるので、そういった株を買っても値上がりするどころか値下がりすることになります。
つまり、逆張り精神で人気のない株を買っても、儲けにはつながらず損失につながるということです。
こう考えてみると、一見もっともらしく聞こえるこの格言は、真に受けた投資初心者を損させるためにあるように思えてきます。
実際、個人投資家の多くは逆張り戦略で負け続けていることが統計的に明らかになっています。
なぜ逆張りが良くないかについては、過去の記事でもまとめていますので、下の記事を一読して頂けると助かります。
まとめ:格言だからと言って鵜呑みにするのは止めよう
一般的に、格言や常識は身に付けるべき知識を的確に言い表したものですから、初心者ほどそれを必死で覚えようとするものです。
しかし、中には役に立たない物もあり、ある意味初心者を騙す形になることもあります。
そのため、格言や常識だからと言ってそれを鵜吞みにせず、本当に正しいのかどうかは自分の経験によって確かめていくべきです。
そのためには時間も手間もかかりますが、そうせざるを得ないのです。
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