[盲点] 株を安く買ってはいけない理由とは?
買い物をするときはできるだけ安く買うのが原則です。
その方が自分の手元に多くのお金を残しておけるのですから、それは当然のことだと思われます。
例えば、スーパーに行くと割引されている商品はそうでない商品よりも売れ行きが良くなります。
ポイント制度やタイムセールなども、突き詰めて考えれば、できるだけ商品を安く買いたいという消費者心理を突いたものでしょう。
つまり、消費者(買い物する立場)は「安い」というのが好きなのです。
当然、株を買うときにもできるだけ安く買いたいというのが人間というものです。
そのため、投資の世界にも「安い」という概念を持ち込み、「できるだけ割安な株を買おう」という投資法があります。
これを俗に「割安株投資」と言います。
しかし、この「安い」という概念が問題であり、投資の世界では厄介なことになる可能性を孕んでいます。
そこで今回は「なぜ株を安く買ってはいけないのか」を解説したいと思います。
今回の話は多くの投資家にとって盲点になりがちだと思うので、一読頂ければと思います。
なぜ株を安く買ってはいけないのか?
安くなるのには理由がある
なぜ株を安く買ってはいけないのかを説明するには、なぜ株が安くなるのかを説明するのが1番手っ取り早いでしょう。
そもそも株というのは買う人が多ければ株価が上がり、売る人の方が多ければ株価が下がる仕組みです。
つまり、株価が下がる(=安くなる)というのはそれだけ多くの人が株を売っていることを意味します。
しかし、投資家は馬鹿ではないので何の理由も無しに株を売ったりはしません。
大量に株を売ればその分だけ株価が下がりますし、株を売るには手数料もかかるのですから、できることなら持っておきたいはずです。
それにもかかわらず、株価が下がるほど株を売る人が大量にいるということは、それなりの理由があるはずです。
つまり、安くなる株は安くなるだけの理由があるということです。
例えばその企業が不祥事を起こしてしまったとか、業界全体の見通しが暗いとか、パッとしない業績が続いているからとか、理由はいくつか考えられます。
しかしいずれにしても、株を売る人が大量に発生するくらいには、何らかの理由があるのです。
したがって、いくら安いからと言っても、その理由次第では必ずしも安いとは言い切れないということになります。
安く見えた株も、その理由を踏まえて再検討してみると実は割高な株だったということは十分有り得る話であり、そう判断した投資家が大勢いるからこそ、その株は売られて株価が安くなっているのです。
安いのではなく安物だから
株が安くなるのにはそれなりの理由があるからなので、安く株を買ったからと言って儲けられるかどうかは別の話になってきます。
株式市場で株を安く買えたなら、それは「安かろう悪かろう」もしくは「安物買いの銭失い」という可能性が高いのです。
つまり真相は「安い株が存在するのではなく、安物の株が存在する」ということです。
安い株を買って儲けるためには、「安くなっていたけど、実はそんなに悪い株じゃなかった」というシナリオが必要ですが、他の人が売り急ぐ株にそんなシナリオがあるケースは稀です。
自分だけはその株の真価を見抜いていて、安くなったところでその株を買い占めておき、いつの日か本来の価値が反映されて株価が上昇して大儲け。
今更買おうとしてももう遅いw
というような、なろう小説みたいな展開を期待している人には申し訳ないのですが、目ざとい人が大勢集まる株式市場でそんな展開はほとんどあり得ません。
もしそんなにポテンシャルのある株なら最初から売られたりしないはずですから。
やはり売られるからには売られるなりの理由があり、その理由があるからこそ株は安くなると考える方が自然です。
このように、スーパーで商品を安く買えたら嬉しいのとは違い、株式市場で株を安く買えたら嬉しいとは限らないのです。
割安な株を買っても儲かるとは限らない
「安いのではなく、割安な株を買うのだ」と主張する方もいるかもしれません。
単純に株価が安いから買うのではなく、本来の価値から見て株価が不当に安くなっている株をを買うから、理論上損することがないというわけです。
しかし残念ながら、その主張も通りません。
なぜなら、株に本来の価値なんてないからです。
仮にあったとしても、それを考慮して行う投資には意味がありません。
それは株式市場を見てみればすぐに分かります。
株に本質価値というものがあるならば、全ての株はある一定の株価に落ち着くはずですが、株式市場では毎日株価が乱高下しています。
もちろん株の本質価値が変化する以上、多少の株価変動は当たり前ですが、それでは株価が乱高下する理由を説明できません。
価値が下がるにせよ上がるにせよ、株に本質的な価値があるのなら、ある一定の株価を目指して収束していくはずですが、そうはなっていないのです。
このことが、株の本質的な値段というものがあったとしても、株価はそれに基づいて決定されるわけではないという事実を示しています。
加えて言うなら、そもそも株の本来の価値とは一体何でしょうか。
仮にそんなものがあったとしても、それをどうやって見積もるのでしょうか。
見積もれないものを前提に投資をすることはできません。
つまり、株の本当の価値とは何かを考えることには意味がないことになります。
そのため、割安な株というのは空想上のものでしかなく、割安な株とやらを買ったところで、それで儲かるとは限らないという結論に達するのです。
株は未来への予想で動く
じゃあ株価はなぜ揺れ動くのかというと、人々の心理が反映されて動くのです。
「この会社は将来業績を伸ばすだろうから今のうちに買っておこう」
「この会社はもう魅力がないから、今後の成長には期待できないので売っておこう」
というふうに、株価は株を売買する人の心理を反映します。
そして人間は将来どうなるのかを個々に予想して行動します。
つまり、今株価が安いか高いかというのは実はどうでもいい話なのです。
大事なのは将来その会社がどうなっているのかという予想であって、参考程度に株の価値を見積もるのはできても、それで割安だと判断するのは安易だということです。
これこそが「株を安く買ってはいけない理由」なのです。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません