高配当銘柄は”買い”なのか?
投資法にも色んな種類がありますが、最近人気なのは高配当株投資です。
企業は得られた利益の一部を配当として出すことがあるのですが、中でも高い配当金を出す企業群は高配当株として人気を集めているのです。
そこで今回は「高配当株は”買い”なのか」について検討した結果をお話ししたいと思います。
投資方法は人それぞれなので参考程度に聞いてほしいと思いますが、今回話す内容は高配当株投資の根幹に関わるところですので、一読して頂ければと思います。
高配当株への投資はアリかナシか
結論から申し上げますと、個人的には高配当株への投資はナシだと考えています。
こんなことを言うと、たくさん配当が貰えるんだからいいじゃないかと言う人もいるかもしれません。
確かに配当はたくさんもらえるに越したことはないのですが、企業が高い配当を払う仕組みを考えると、高配当株への投資はナシだという結論に至りました。
その理由は以下の通りです。
高配当株は低成長株
なぜ高配当株が買いではないかを説明するには、なぜその企業は高い配当金を出すのかを説明するのが一番手っ取り早いでしょう。
それは、その企業には利益の投資先がないからです。
通常、企業は利益を出すとそのお金を使って投資を行います。
例えば生産効率を挙げるために新しい機械を買ったり、新規出店の為に新しい不動産を買い付けたり、事業規模拡大の為に新規採用を増やしたりします。
なかには新商品の研究開発のために多額のお金をつぎ込む企業もあるでしょう。
要するに、今期得られた利益を使って来期さらに多くの利益を得られるようにするわけです。
そうすることによって利益がさらなる利益を生んで企業が成長し、それが株価の上昇へとつながっていくのです。
そう考えると、企業にとって利益として得られたお金には使い道がたくさんあって、本来であれば、配当金として出すのは投資した後に余ったわずかなお金になるはずです。
それにも関わらず高い配当金を出せるということは、その企業はそもそも投資を行っていないからという事になります。
例を挙げて説明しましょう。
高配当株として有名なのはJT(日本たばこ産業)やBTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)などのタバコ株が挙げられます。
タバコは利益率が非常に高く、既に一つの商品としての完成形に至っているため、これ以上研究開発にお金を投資する必要がありません。
そのため安定して多くの利益を確保できるのが売りです。
しかし、安定しているという事は裏を返せば成長していないという事です。
どんな企業であっても成長しない企業はいずれ廃れていきます。
昔は大勢の人がタバコを吸っていたので、タバコ企業は盤石で金の生る木だと言われていました。
しかし昨今の健康意識の高まりによって嫌煙ブームが広がり、喫煙者の割合は年々減少傾向にあります。
それに伴い、タバコ企業は売上や利益の確保が厳しくなってきている現状があります。
このように時代の趨勢と共に流行り廃りがあるため、いかなる企業であっても常に成長を目指していかなければならないのです。
そう考えると、高配当株は低成長株だと言い換えることができ、利益を投資することなく高配当を出し続けている企業はジリ貧状態にあると言えます。
配当というのは利益が原資ですので、利益が細っていけばいずれ高配当を維持できなくなる日が来ます。
こういったことを踏まえて考えると、高い配当金をもらったからと言ってもさほど嬉しくなく、高配当株だからといって買いにはならないということになります。
配当には税金がかかる
それでも高い配当金が貰えるならそういった事情には目をつぶってもいいじゃないかと思う人もいるかもしれません。
しかし、そもそも配当金としてお金を受け取っても配当金には約20%の税金がかかります。
企業が利益を投資する際にはかからなかった税金です。
投資した金額に対してどれだけの配当が得られるかを表したものを「配当利回り」と言いますが、配当利回りは高配当と言われるものでもせいぜい4%程度です(それ以上利回りが高い株もありますが、そういった株は株価が急落した影響で利回りが急騰しただけなので、高配当である意味がありません)。
それに比べて、業績を拡大させて成長している企業の場合、株価を10%、20%と上昇させていくのは珍しくありません。
つまり投資家の立場からしてみれば、得た利益は配当金として配るよりも投資して企業を成長させ、株価を上昇させてくれる方がありがたいのです。
こう考えると、わざわざ高配当株を選ぶよりも成長しつつある企業の株を買う方が良いということになります。
いつまでも高配当が続くとは限らない
前述した内容ですが、いくら高配当株だからと言っても、その高配当がいつまで続くかは怪しいところがあります。
配当金の原資は利益なのですから、高配当を維持するためには利益の拡大が必須です。
そうしなければ、いずれ配当金額を据え置き、やがて減配に至るのは目に見えています。
しかし、高配当株は利益を投資に回していないからこそ高配当なのであり、そのような株には成長余地がありません。
今は良くてもいずれ高配当を維持できなくなる恐れがあります。
こう考えると、いつまで続くか分からない高配当(利回り4%程度)を目当てに投資をするのは割に合わないということになります。
配当金が入るのは年2回限り(しかも安い)
一般的に、配当金は中間決算と本決算の時期に支払われます。
つまり配当金を得られるチャンスは年2回です。
高配当株投資というのは、その2回の配当金を目当てに投資する手法です。
そして高配当株というのは利回りが4%程度の株を指します。
つまり、高配当株を1年間保有して、その2回とも配当金を受け取ることで、年4%程度の利益を目指すのが高配当株の趣旨ということです。
しかし冷静になって考えてみると、これは非常に割に合わない気がしてきます。
なぜなら、株式市場を見渡してみれば1年間の間に100%以上株価を上昇させる株が他にたくさんあるからです
わざわざ年4%程度、しかも20%課税される配当金の為に資金を使うのはもったいないという気がしませんか。
なかには「年2回の配当金が貰えるタイミングだけ株を買って、他の時期は買わなければいい」という人もいるかもしれません。
しかしその考えは通りません。
なぜなら、同じことを考えている人は大勢いて、配当金が貰える時期になると配当金目当ての買いが集まって株価が上昇し、配当利回りが低下するからです。
結果的に、数千円の配当金の為に数万円損するといったことになりかねず、これでは本末転倒です。
それだったら最初から別の株を買っていた方がマシという事になります。
まとめ
以上説明したように、高い配当金が貰えるからと言っても、それは手放しで喜べるようなものではないという事がお分かりいただけたかと思います。
配当金というのは利益が形を変えただけなので、結局は成長していて利益額が上昇傾向にある株を買う方が良いという結論に至ります。
もちろん、高配当株は定期的に現金収入をもたらしますし、長期的に見ればそこそこ高い投資成績になることが知られているため一概にダメとは言い切れません。
例えば、仮に1億円持っている人が高配当株に全額つぎ込めば、後は何もしなくても年300~400万円の現金が得られるということになります。
そのため、高配当株は今話題のFIREやセミリタイアにうってつけと言われています。
しかし問題なのは「その1億円をどうやって作るか」という話であり、その1億円を高配当株投資で作るのは非常に困難であると言わざるを得ません。
そう考えると結局は「高配当株投資は割に合わない」という話になります。
つまり結論としては、高配当株は”買い”ではないということです。
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