投資をするなら「大企業=安定」というイメージから離れなければならない理由

投資哲学

皆さんは投資を始めて最初に買った銘柄を覚えているでしょうか。

恐らくはトヨタのような大企業だったのではないでしょうか。

実際のところ、初めて株を買うときに限らず投資をするときには有名な大企業の株を買おうとする人は少なくありません。

もちろん、それが素人臭くてダメだと言っているわけではありません。

どんな株を買うのかは個人の自由だからです。

ただ、もし「大企業の株なら安定していて倒産の危険がないから安心だ」と思って買っているのなら、それは素人臭いし駄目な投資だと言わざるを得ません。

そこで今回は、投資をするときに「大企業=安定」というイメージを持ってはいけない理由について説明したいと思います。

これを読むことで、投資をする時にはどういった基準で選べばいいのかについてのヒントが得られるかと思いますので、一読頂ければと思います。

大企業は安心というイメージ

日本では大企業信仰とも言えるほど、大企業に対する信頼感と根強い人気があります。

実際、大学生の就職希望ランキングを見ると名の知れた大企業が上位を独占していますし、商品売り場でも大企業の商品は安定的に売れているものが多いです。

逆に中小企業は不安定であるとされ、就職先として人気度が低い傾向があります。

株の世界でもこの傾向は見られ、有名企業の株は非常に多い出来高を付けていますが、名前も知らないような中小株の出来高はせいぜい数万株に留まり、人気の低さがうかがえます。

大企業と比べて業績に大差ない場合でもこの傾向は見て取れるので、これは大企業株の方が中小企業株よりも安定しているというイメージからくるものでしょう。

確かに、大企業は大きくなるだけの実績を残してきたからこそ大企業になれたわけですし、そこに至るには多くの顧客からの信頼を集める必要があったでしょう。

加えて、有名であるという事は、裏を返せば何か一つでも不祥事を起こせば悪名が広がるというプレッシャーにもなり、それこそが信頼性のもとになっているという考え方もできます

したがって、大企業が安定していて安心だというイメージはあながち間違ってはいません。

間違っていないのですが、だからと言って大企業の株を買うことが安心だとは限らないのです。

大企業と大企業株は別物

なぜ大企業の株を買うことが安心だとは限らないかというと、大企業と大企業の株は別物だからです。

前述したように、大企業が安定しているというイメージはあながち間違っていません。

中小企業と比べると実績もありますし、福利厚生も充実していますし、どうせ働くなら名の知れた大企業を希望する人の気持ちはよく分かります。

しかし、大企業で働くのと大企業の株を取引するのは全くの別問題だと言いたいのです。

確かに大企業は中小企業よりは安定しているかもしれません。

しかしそれは相対的に見ればの話であって、実際には業績が大きく下がり不安定になる時だってあるわけです。

大企業で働いている人は業績が傾いたからと言って直ちにリストラに合う危険性はないかもしれません。

日本では解雇規制が強い為、すぐに解雇されて路頭に迷う危険はほとんどなく、会社員の身分は安定しているのです。

しかし、その大企業の株を取引している投資家はそうではありません。

業績が傾けば株価が下落しますが、そのダメージを受けるのは投資家です。

つまり、大企業で働くのは安定していて良いかもしれませんが、大企業の株を取引するのは安定しているわけではないということです。

大企業神話の崩壊

上記のように、以前は「大企業は安定している」というイメージがありましたが、今となってはその安全神話も崩れつつあります。

例を挙げて説明しましょう。

最も安定している大企業の株を挙げろと言われたら、以前だったら東京電力が筆頭候補として挙げられました。

東京電力は関東全域の電力供給を担う大企業であり、電力が現代社会に必要不可欠であることを考えると、同社の地位は揺らぎないものでした。

実際、配当も株価も安定しており退職金をつぎ込む先として大人気の投資先でした。

しかし皆さんご存知の通り、2011年3月11日に東日本大震災の影響で東北や関東は壊滅的被害を受けました。

特に、東京電力が所有する福島第一原発は水蒸気爆発の後メルトダウンが発生する大事故に発展し、翌日の東京電力株はストップ安に張り付く事態となりました。

結局、事故前に2000円以上あった株価はあっという間に1/4である500円を割り込み466円まで値下がりする事態となりました。

こういった事態を一体誰が予想していたでしょうか。

つまり何が言いたいかというと、どれほど盤石の地位を得ているとされる大企業であっても、何かしらのきっかけ一つで大暴落する危険は常にあるという事です。

そして前述した通り、大企業が安定していることと大企業の株が安定しているかは別問題として考えてほしいという事です。

あれだけの事故を起こしていながら、東京電力は倒産していません。

同社で働いている社員が大勢リストラされたという話も聞きません。

つまり、働く立場からしてみれば東京電力という大企業は非常に安定していたわけです。

しかし、東京電力の株を取引している投資家たちはたまったものではありませんでした

あっという間に資産価値が1/4以下に下がったのですから。

このように、大企業だからと言って安心している人にはある日突然大変な目に遭う可能性があるという事です。

大企業の株は儲かりにくい株

こんなことを言うと「大事故を引き合いに出して”大企業=安定”の図式を崩したいだけじゃないか」と言われそうです。

しかし「大企業の株=安定」と考えることが良くない理由がもう一つあります。

それは、大企業の株は投資効率が良くないという点です。

投資家が株を買うのは儲けたいからですが、儲けるためには買った株が大きく上がってくれなければなりません。

つまり、投資家にとっては株価が安定していては困るのです。

株価は大幅に上昇してくれなければ買う意味がありません。

大企業の株価が上がるためには数百億円もの買い需要が必要ですが、そんな需要がいつもあるとは限らず、買ったのはいいが株価がなかなか上昇しないという事態になっては買った意味がないでしょう。

対して中小企業の株であれば、数十億円の買い需要があれば株価は急騰します。

このように、企業の規模によって株価の上がりやすさが違うため、大企業の株は投資効率的にはあまり良くない株なのです。

大企業の株は上がりにくいかもしれないけど、その分下がりにくくもあるから、投資する側からしたら安心なんだ

と言いたい人もいるかもしれません。

しかし、コロナ禍で日経平均株価が連日大きく値下がりした事実を見れば、大企業だからと言って株価が下がりにくいというのは嘘だと分かるでしょう。

実際、ユニクロを経営するファーストリテイリングは株価が半値近くまで下落しそうになりました。他の企業も同様です。

つまり大企業だろうが、いざとなったらしっかり株価は下がるのです。

まとめ

以上説明したように、大企業の株だからと言って安定しているというのは間違いだという事がお分かり頂けたかと思います。

今回言いたかったのは、安定した企業はあるかもしれないが、安定した株は存在しないという事です。

投資家であれば、全ての株は不安定だという現実を受け入れなければなりません。

人間は安心・安全を求める生き物なので、大企業株に安定のイメージを持つのは多少仕方ないところがありますが、それではいけないのです。