割安ばかり気にすると損する理由
割安株投資は広く知られた投資法です。
割安株とは、財務諸表から想定される会社の価値(値段)よりも安い株価で取引されている株のことを指します。
株価はいずれその会社の価値相応の値段になるはずなので、割安株を買っていればそのうち儲かるはずだというのが割安株投資のコンセプトです。
一見すると何も間違っていないように思えますが、この「割安」という概念は厄介です。
株価が安いのか高いのかを気にし始めると泥沼にはまる恐れがあるからです。
そこで今回はなぜ「株価が割安か」を気にしてはいけないかを説明します。
今回説明する内容は多くの投資家にとって盲点となりがちなので、是非目を通してみて下さい。
株価に割安も割高もない
最初に本記事での結論を述べておくと、
「株価には割安も割高もなく、一度付いた値段は正当である」
ということです。
そもそも株式市場でどのように株価が決まるかというと、売り手と買い手の注文がぶつかることによって決まります。
例えば、買い手が1000円の買い注文を出しているとします。
ここで売り手が1000円で売り注文を出したとしたら、1000円で取引が成立し、現在の株価は1000円ということになります。
一方、売り手が1100円で売り注文を出したとしたら、1000円の買い注文とは合致せず、取引は成立しません。
取引が成立するためには買い手と売り手の注文価格が合致する必要があります。
逆に言えば、一度付いた株価は、買い手と売り手の間で「この株価で取引したい」という合意があった証拠なのです。
買い手にも売り手にも相応の思惑があります。
1000円で買い注文を出した人はその株が1000円以上になるという見込みがあったからこそ1000円での買い注文を出したのでしょう。
逆に1000円で売り注文を出した人は、その株が1000円以下に下がる見込みがあるからこそ1000円で売っておこうと思って注文を出したのでしょう。
株価がどちらに動くかは誰にも分かりませんが、いずれにしても、注文を出すからにはそれなりの意味があります。
そして一度付いた株価というのは取引が成立したという証拠であり、買い手にとっても売り手にとっても意味のある値段なのです。
そう考えると、現在の株価が割安だとか割高だというのは一方的な見方に過ぎないということになります。
もし本当にその株価が割安だというのならば、なぜ売り手はその株価で売り注文を出して取引を成立させたのでしょうか。
割安で売ったら損するわけで、売り注文を出す意味がありません。
株式市場にはわざわざ自分から損したがる奇特な人はいないはずであり、売るからにはその株価より下がる前に売りたいという意図があるはずです。
割高というのも同じことです。
もし本当に株価が割高ならば誰も買わないはずです。
それでもなお買い注文を出して株を買った人がいるということは、その時の価格よりも上昇すると見込んでいるからでしょう。
このように買い手と売り手は表裏一体であり、どちらにも相応の思惑があるからこそ取引が成立するのです。
どちらのほうが正しいのかは結果を見てみなければ分かりません。
そう考えると、割高だとか割安だというのはどちらか片方の視点でしかなく、単なる主観の域を超えません。
あなたが知らないことを他の人が知っている場合
財務諸表は公開情報なので、市場参加者の誰もが見ることができます。
割安かどうかを算出する方法は広く知られているため、売り手は売ろうとしている株価が割安なのかどうかについておおよそ知っているはずです。
したがって、売り手も株が割安かどうかは知った上で売り注文を出すかどうか検討しているはずです。
それでも売り注文を出して取引を成立させたということは、買い手が知らない何かを知っていて、株価が下がる前に処分しておきたかったのでしょう。
例えば、不祥事を起こしてしまったことがマスコミに知られて近々ニュースになりそうだとか、業績不振により業績予想の大幅な下方修正を発表する予定など、株価に悪影響のありそうな情報がどこから漏れている場合です。
この場合、それを知った人は株価が割安であっても持ち株を売って逃げますので、ニュース等で発表される前に株価は下り始めます。
つまり、一見何の問題も無さそうに見える株の値段が下がって割安にみえたり、割安だった株がさらに安くなるという事態が起きます。
この場合、割安だからといって買いに行った人は損をします。
つまり何が言いたいかというと、株式市場では、あなたが知っていることは大抵他の人も知っているし、あなたが知らないことを他の人が知っている場合もあるため、あなたにとって一方的に有利な取引は存在しにくい、という事です。
そうでなければ、何かしら問題のある株を高値で買わされる羽目になるからです。
株価を動かすのは人
株価は買い手と売り手が取引することによって決まります。
もちろん、会社の売上規模や保有資産等によってある程度の適正金額はあるのでしょう。
しかし最終的には売り手と買い手が注文を出し、取引が成立することによって株価が決まります。
つまり、株価を動かしているのは人であって、財務諸表から算出される数字ではないということです。
財務分析した結果はあくまで目安に過ぎず、ゆえに割安・割高というのも目安でしかないのです。
株価は人々が会社の将来をどのように予想しているかによって左右されます。
例えば、これから売上や利益を伸ばしていきそうな会社なら買い注文が集まってきて株価は上昇します。
逆に、業績が悪化しそうだと思われたら、売り注文が多数でることによって株価は下がります。
まとめると、株価を動かしているのは人であり、人が将来をどのように予測するかによって売買注文が左右されます。
そしてその注文の内容によって株価は上がったり下がったりを繰り返すのです。
大事なのは割安感より期待感
株価を動かしているのは人であり、人が会社の将来をどのように予想しているかによって株価が決まってくるということをお話しました。
つまり、株価にとっては現在の株価が割安かどうかということよりも、将来的に会社の未来は明るいのか暗そうなのかという点が大事ということです。
人々が会社の未来をどう予測するかに比べれば、財務分析した結果が割安かどうかはあまり関係がないのです。
もちろん目安としてはとても参考になるのですが、割安かどうかだけを頼りに投資をしていたら思わぬハズレくじを引かされる可能性があるので気をつけましょう。
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