EPSとPERを用いた目標株価の計算方法について

2022年4月2日基礎理論

投資をやっているとよく「目標株価は〇〇円です」という記述を見かけますが、何の根拠があってそんなことを言っているか疑問に思ったことはないでしょうか。

株価というのは常に変動するものなので、絶対的に適正な株価というのは存在しません。

しかし企業の業績を踏まえると、その企業のある程度の価値(値段)が算出できるのです。

そして、企業価値を算出できれば騙されて割高な株を買わずに済んだり、逆に割安な株を手に入れることができるようになります。

そこで今回は、目標株価の算出方法について解説したいと思います。

目標株価はEPSとPERの掛け算で求められる

早速ですが、目標株価の計算式を以下に示します。

目標株価=(将来の予想EPS)×(将来の予想PER)

これだけです。

例えば、EPSが100円、PERが15倍の株があった場合、目標株価は100×15=1500円と計算できます。

このように、EPSとPERさえ分かれば、後はそれを掛け合わせるだけでよいので意外と簡単に計算できてしまうのです。

ただ、EPSとかPERって何?という疑問もあるかと思いますので、それらについても解説したいと思います。

EPSとは

EPS=1株当たりの純利益

EPSとは「Earnings PER Share」の略で、その企業が1株当たりどれだけの純利益を稼ぎ出しているかを見る指標の事です。

例えば、発行済み株式数が10万株の企業の純利益が1億円だったとすると、この企業は1株あたり1000円の純利益を出しているという事になります(EPS=1億円÷10万株=1000円)。

「1株当たり」というのがミソで、大企業で多額の利益を上げているからと言ってEPSが高いとは限りませんし、中小企業の部類でもEPSは高いということがあります。

例えば、純利益が10億円と言われると多額の利益を稼いでいる会社のように聞こえますが、これが総発行株式が5億株の企業だと、1株当たり2円しか稼げていないことになります。

一方、純利益が1億円で総発行株式が1000万株の会社だとEPSは10円になり、前者の企業の5倍効率よく稼いでいることになります。

当然、投資効率は後者の企業のほうが高いので、後者の方が投資候補としては魅力的だということになります。

このように、EPSを見ることによって会社の規模や業種にかかわらず、その会社の「稼ぐ力」を見ることができます。

将来の予想EPS

投資家が知りたいのは、「投資しようとしている会社が将来どれだけの利益を稼ぐか」です。

つまり、将来的にEPSがどれくらいになっているのかが知りたいわけです。

それは四季報を見れば来期予想EPSとして書かれています。

また、利益成長率を見て来期の利益額を自分で概算し、それを発行済み株式数で割れば将来の予想EPSを算出することもできます。

例えば、利益の年成長率が10%、今期のEPSが100円の企業があった場合、この企業の三年後のEPSは
EPS100円 × 1.13(10%成長が3年) ≒ 130円
と予想することができます。

これとPERを組み合わせることで将来の目標株価が算出できるようになります。

PERとは

PERとは「Price Earnings Ratio」の略で、株価が一株当たり純利益の何倍になっているかを示す値です。

一般的に、この値が大きいほど割高で、低いほど割安であるとされています。

例えば、一株当たり1000円の利益を出す株が1000円で売られていたら、とても安いと思うでしょう。

この会社のPERは1000円(株価)÷1000円(一株あたり純利益)=1(倍)

となります。

業種や企業にもよりますが、PERの平均は15だと言われていますので、PERが1というのは破格の安さです。

もしその会社を買えば、1年で投資した資金を回収できるうえに、2年目からは毎年1株当たり1000円の利益が上がるからです。

もちろんこれは極端な例え話ですが、PERを見れば業種を問わず株価が割安なのか割高なのかが比較できるというのは何となくお分かりいただけたのではないでしょうか。

また、PERには「その株がどれだけ期待されているか」という意味合いも含まれています。

例えば、PERが15倍というのは株価が純利益の15倍になるまで買われているということですが、これは「この株はこの先15年分くらいの利益は稼いでくれるだろう」という投資家たちの期待の度合いを示していると言えます。

たまにPERが100倍という、とんでもなく割高そうに見える株がありますが、これは「この株はこれから急成長して、今の100倍くらいの利益を稼いでくれるだろう」という期待から株を買っている人たちがいることを意味します。

つまり、これからその会社が成長しそうだと期待されれば、その分だけ投資家からの人気が高まり株が買われるのでPERは高くなります。

逆に減益決算や不祥事の報道など、企業の先行きに不安や不透明感があれば投資家からの人気が下がり、株が売られるのでPERは低くなります。

したがって、「PERが高いからと言って割高、PERが低いから割安」という見方よりは「PERは投資家からのどれだけ期待されているかを表す」と考えるのが良いでしょう。

将来の予想PER

目標株価を算出するには、目標となるPERを設定しなければなりません。

PERは投資家からの期待の度合いを示す値ですから、将来の予想PERを出すという事は、その株が将来的に投資家からどれくらいの人気を得られるかを予想することになります。

日本企業の平均PERは15ですから、基本的にはPER=15(倍)と考えて算出してみることになりますが、企業が成長している場合はその分だけ期待値もあがるわけですから、それを反映させなければなりません。

例えば、利益が毎年10%ずつ上がっている場合、その株の人気度合いも10%ずつ上がると考えられます。

したがって、当年のPERが15倍、利益成長率が10%の株の3年後の予想PERは以下のように見積もることができます。

3年後の予想PER=PER15(倍)×1.13(3年間10%成長)≒ 20(倍)

目標株価を算出して投資判断に活かす

このようにして、将来のEPSとPERを算出出来たら、後はそれをかけ合わせれば将来の目標株価が計算できます。

先ほどの例でいうと、EPSが100円、PERが15倍、利益成長率が10%の3年後予想EPSと予想PERはそれぞれ130円、20倍でした。

したがって、3年後の目標株価は以下のようになります。

予想EPS130円 × 予想PER20倍 = 2600円

このようにして将来的な株価を予想することで、投資判断が正確になります。

例えば、この株が1500円で取引されているとしたら、今買う事で3年後に一株当たり1100円の利益を見込むことができます。

逆に、この株が現在3000円で取引されているとしたら、将来的な成長を計算に入れても今買うのは割に合わないので買わないという選択を取ることができます。

株価の理論値を計算できるようになることで、その株が割高なのか割安なのかをより一層深く理解することができるようになり、その結果、割高な株を高掴みしなくなったり、割安な株を前もって買い仕込んでおくことができるようになります。

この数字を自分で計算できる人は、他人の言う割高・割安に騙されないようになりますので、投資家としてのレベルが確実に上がります。

多少面倒ではありますが、「この株の妥当な株価はいくらぐらいだろう」という時に使う必須の計算テクニックですので、是非とも覚えておきましょう。